ぼくにはパパとママ
おとうとといもうとがいます
庭には大きな木が植えられていて、いちねんじゅう
甘くておいしい実をたくさん付けてくれます
ぼくたちはそれらの実を売ったり食べたりして
毎日しあわせにすごしていました
ある日、ぎもんに思い
「どうしてぼくの庭の木はほかの家よりもたくさん実を付けてくれるの?」
と、聞いたら
パパは、「それはね、よその庭よりも"土"が良いからなんだよ」と、教えてくれました
あるとき、じけんが起こりました
となりに住んでいる家族のおじさんが
知らない人をさらってきて家族全員で庭に生き埋めにしたのです
なんてひどいことをするんだ!
ぼくはゆるせない気持ちでいっぱいになり
パパとママも同じようにおじさんの家の人たちのことをののしりました
おとうとといもうとはないています
すると、となりの家のおじさんたちは言いました
おまえたちもおなじ事をして富を得ているじゃないか
もしうたがうのなら庭の木の下を掘って土のなかを見てみると良い
次の日、パパが庭の木の下を掘ってみることにしました
それでひとつわかったことがありました
ぼくの家の庭の木の下にはたくさんの人達の死体が埋まっていました
おじいさんが生きていたころ
聞いたことがありました
「おじいさんはね、昔、家族みんなの為に戦って、家族のために"富"をのこしたんだよ」って
おじいさんは、ぼくたちのために"あの木"を遺してくれたのでした
ぼくたちが今まで売ったり食べたりして、生活を豊かにしてくれていたのは
あの木の下のたくさんの死者だったのです
今日も土の下にいる"誰かの命"によって
ぼくたちは生かされ続けています
ぼくたち家族は
隣人を責める資格はありますか?
ぼくは ゆるされますか?
ぼくたちは 赦されますか?
今も、そんなふうにして
あちこちに いろんな"木"が
林檎を実らせています
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