まるでロビー一面に散らばる薬莢のようだった
掃除が大変だったのだろう
ため息を漏らす彼に話の続きを促す
億劫そうに口を開いた
床に目を落としそれを聞き入った
折り返してくれないか
できるだけ早くと急かす
留守電を消した
ディスプレイに映る名を見る
久しく見ぬ表示にたじろぐ
おそらく相手もまた同じく
繋がることに対して驚くだろう
私たちの関係などは
とっくに無かったことになって
いたのだから
遠ければ遠いほどに
近くなる靴底の音
暫くだ どうしてた
などという会話を省いて本題に入る
雨が降る
ここのところずっと雨ばかり降る
いっそこの思いも祈りも
土に還してくれないかと
話しかけても
聞く耳すら持たず
窓を伝っていった
では済んだら声をかけてくれ
とだけ残して彼は
管理人室に戻った
早速準備に取り掛かろうと
カバンに手を伸ばした
その時に背後に
気配を感じた
振り返ればきっと居るに違いないだろうな
雨が降る
ここのところずっと雨ばかり降る
いっそこの思いも祈りも
土に還してくれないかと
話しかけても聞く耳すら持たず
木々を濡らして喘がせるためだけに
窓を伝っていった
近付けば近付くほどに
遠くなる靴底の音
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