黒衣の羽音を背に
奥行と輪郭を取り戻す街を抜け出した
潰えた者たちが微笑み出し
奪わせた五感にこの胸この四肢
絡め取られるその前に
切り揃えられた奇跡から抜け落ちてなお
秀でることも劣ることもなくあり続けることを望むが
鏡の前に立ち足元にへばりつかせた溜息は
自らに呼吸する才も意欲もないことを告げていた
野暮な本音は裂け目に任せ
出まかせは見知らぬあなたに良しなに
苦渋に満ちた表情など白粉と駆け落ちさせてしまえばいい
遡行する振りをして
流れ込む常識の坩堝へ
無風に模られる波間
眼前に広がる体脂肪の海へ
寄る辺ない
されど投げ打つことはない
皆が願うもの
皆から願われること
どちらにもうんざりしているようだ
明日を寝台のそばに置かれ慣れたように零れ落ちる鱗粉
数多の視線に晒されるうち漏れ出た呻吟は無遠慮な勾配を生む
蠕動する街に注ぎ足されるただ一人には悪意に思える善意
その勳しに爪を立て呪縛を祝福とさせぬように
淡く濡れて落ちぶれた火の酒に見守られ
青白い部屋で覚醒を待つ
都合の良い手にだけ触れられてはいられない
ただ弛まぬ熱に溺れていたいだけ
優しくつぶさにここに居ること告げるなら
永遠にも似た灯に嫌気を
過去を寝台の底へ埋め爆ぜたように散りゆく純真
願わくはこの顔を濡羽色で塗りつぶせ
持たざる者の悲哀など知るものか
溶けてしまいたい魂が叫んでいる
花装束の香りを払い私は私を好まない私が
何も聞かず 何も見ず
何も感じず なにも
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