病的に清潔な牧場の檻の一番奥で
羊は震えていた 顔中に脂汗浮かべて
「ああ次は俺の番だ きっともうすぐに声が掛かって
先に行ったあいつらと 同じ所へ行くのさ」
しかし彼の予想に反して
呼ばれてくのは何故か別の奴ばかり
待てよ もしや まさかとは思うが
俺は最初(はな)から 必要とされていないのか
残り物の羊は ずっと名前を呼ばれない
悲しそうにしてみたり あるいは当たり散らしたり
心配ないよ いつかは 皆呼ばれて行くんだよ
連れて行かれる先は 何処だか分かりゃしないが
病的に清潔な牧場の檻の一番奥で
羊は願っていた こんな日が続けばって
「ああ俺はどこへだって 行きたくない どうか放っといてくれ」
気付いた頃には 檻の中はひとりだけ
弱々しく 鳴き声を上げる
頭の中で トライアンドエラー繰り返す
いっそもう 狂った振りして
飼育員 噛み殺す したら出られるのか?
残り物の羊は ずっと誰かに怯えてる
癇癪起こしたり あるいは泣き叫んだり
大丈夫だって いつかは きっと命が報われる
それがいつになるかは 誰にも分からないけど
かごめかごめ 何時になったら出てくんの
うっさいな 俺だって 本当はもう解ってた
運ばれた先は 動物園か屠殺場か
どっちだっていいよ 独りはもう耐えられない
呼ばれない名前を 何度も強く叫んだよ
置いていかないでくれ 今なら話がしたいんだ
檻を破る鍵が どうしても見つからない
鉄格子に噛み付いた音が どっかで響いた
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