突然君は言ったんだ 北の空を指さして急に
群れから離れて飛び立つ 一羽の鳥を指さして急に
捨てる物がまだあるのだと 帰る場所がまだあるのだと
暮れた街に灯がともる頃 最後の始まりを目指して
振り返り 走り出し さえずる鳥達も姿なくし
寄り掛かる夜のとばりに いつもの事と思いながら
僕は気付いていなかった 僕は気付いていなかった
崩れかけていた君の事を 壊れかけている君の事を
突然走り出した君に いつもと違う横顔を見た
去りぎわに僕の肩を 軽く叩いたのに気付いた今
いつもと違う事だと いつもと違う夜だと
慌てて声の行方 君の行方に でも返事がないから
僕は走り出した あらゆる場所へ 知る場所へ
行く宛をなくしつぶし 愛する者をなくした場所へ
北の空に見たものも 地下の空に見たものも
君が居なければ僕は僕を そう探せないんだ
突然僕は思い出した 走りながら見渡したんだ
雲の多い夜空の中に 消えて行くひとつの光を
あの時の君の言葉に あの時の君の瞳に
苦しみも無く悲しみも無く 未来に滑り込む僕らを
そうなんだろう君も僕も今も 終わる事は無いんだろう
そうなんだろう空も地下も明日も 終わる事は無いんだろう
ただ君は今ここから今 飛び立たなければならないんだ
ただ僕は今ここから今 見送るわけにはいかないんだ
そう、今わかったんだ 悲しい目をしてた君の訳を
その目が探していたのは 悲しみの在り処なんだと
そう、今わかったんだ 苦しみのその訳を
愛するものを無くした街は 愛する街で取り戻すしかないんだと
そうなんだろう その高い窓から笑ってくれよ
そんな事は分っているよと だから僕らは そう、僕らは
そうなんだろ この街にまた 夜にまた 灯がともる頃
苦しみも無く 悲しみも無く 会うんだろ そうなんだろ
果てしなくくり返す なぐさめのない終わりに出会い
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