通り過ぎてゆく赤信号
まだ遠い国道沿い
気怠げなラジオだけが話し相手
君を知った日よりずっと前に
覚えた夏の予感は
どうやら今日のことを知ってたみたいだ
辺りは君の 望み通りに
べとつく潮風に浸かって行く
遠く 遠くの街へ意味を連れて
僕は軽く左眼を擦った
形の崩れた雲 灰色
淡い空の斑模様
いつも撮りこぼしたファインダー越し
君はもういない
無くしたのは僕の中
思い出したのは君の中
壊さないで いつの間にか
♪
裸足の夜に 君を想う
写真機はもう取りに帰らない
深く浮かぶの 波の隙間に
君は多分左眼を濡らした
夕凪 永久の眠りにつくような
静寂と涸れた慕情とで
愁哀 朧げな今日だけは忘れない
どうしても どうしても
水際 君の両の足がつけた跡は
繰り返す中に呑まれて
風浪に傾く陽と君の横顔 有り得ない
労しても 労しても
♪
どっと疲れた体に 微睡んだ空気が襲う
左手には君が欲しがってたシーグラス
一瞥した君の横顔 それは夏の幻
僕は軽く左眼を擦った
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